pipipipikopiko’s blog

名古屋のプロダクトデザイナーのブログ。

デザイン思考を身につける難しさ

近年はデザインの重要性というのが広く認知されるようになり、「デザイン思考」なんて言葉がもてはやされている。
そういうムーブメントが後押ししてか、自由にアイディアを出して提案する特別な組織を立ち上げる企業は多いし、あるいは、社内のスタッフにデザイン思考を身につけさせようと、僕らのようなデザイナーに指導を依頼するケースもある。
しかし、こうした活動が実を結び、デザインの質が向上したり、デザイン思考が実践できるようになった企業というのはほとんど増えていないように思う。
 
ビジネスの世界では、確実な収益を見込むためになるべく効率のいい手段を取りたがる。その結果、評価しにくいこと、確実性の低いことは避けられる傾向にある。
当たり前といえば当たり前だが、こうした効率主義だけでは伸ばせないことは結構多いと感じている。
そのひとつの例が「デザイン思考」というものだと思う。
 
デザイン、とくにデザイン思考と呼ばれるものは、効率学習が難しいものの代表だ。
デザイン系の大学ではどこも一応それらしいカリキュラムが用意されているが、
実際のところデザイナー育成の方法論というのはほとんど確立されていない。
こういう講義を受ければわかるとか(有名デザイナーの講演とかね)、この本を読めばわかるとかいうものでは決してない(アイディアの出し方の本とかね)。
言葉でいくら説明されても、本当の意味で理解するのは困難である。
とにかく実践あるのみで、試行錯誤の末に各々何かを感じ取り、自分のものとしていくのだ。
そんな曖昧で不確実なものだから、大学に入ったからといって将来デザイナーとして活躍できるようになる保証はどこにもなく、学生は大層不安だ。それでもとにかく自分の才能を信じて努力するしかない。
自分にはセンスがないと言ってクリエイティブ職を諦める人は多いが、そう言うわりには実際やる前に諦めていることがほとんどである。
たしかに、職業選択についてそんなリスクを侵すことは簡単なことではないと思う。
しかし、何事もそういうスタンスでは到達できない場所というのは確実にある。
 
そういう経験をしてきた人から見ると、
他部署で優秀だった人をかき集めて、商品を何か考えろと言ったって一朝一夕にできることではないし、
僕らのようなデザイナーを呼んで、開発担当者たちを教育してやって下さいと言われてもその程度では所詮無理な話だと思ってしまう。
何でも教えてもらえばできるようになる、という誤解が蔓延していることはすごく問題だと思っている。
 
※余談だが、デザイン思考をする本職の人間としては、デザイン思考という言葉を使うのはなんだか気恥ずかしい。なぜだろう?