pipipipikopiko’s blog

名古屋のプロダクトデザイナーのブログ。

自撮りのデザイン

デザインという言葉の近年における用法はモノだけでなくコトにも広がっている。キャリアデザインとかグランドデザインとかいうのがそれである。
ここでのデザインは計画というニュアンスであり、英語の元の用法に近い。
一方、いわゆるクリエイティブな業界で使用される「デザイン」を広義の意味でとらえると、
「観測者を意識してなされる行為全般」であると言えるだろう。
これはブランディングと言い換えることもできるように思われる。セルフブランディングという言葉があるが、これはつまり他者を意識した上での自分自身のデザインである。

ここで自撮りについて考えてみたい。
自撮りという言葉は単に自分自身を撮影するだけではなく、より良く演出し、それを公にするという意味まで含んでいる。
自撮りはまず自らを肯定し、それ以上に他者から肯定されたいという思いが内在している。
これに対しネガティヴな感情を示す人も少なくない。
それゆえ自撮りをネットにアップする際は「自分まじブス」「頑張って撮った」などと言い訳のコメントを添えたりする人が多い。
あるいは何か別の話題に添える形で自撮りを公開する場合もある。あくまで自撮りが目的ではないという言い訳にするわけである。
しかし、快く思わない人はそういった思惑を敏感に感じ取る。隠しきれていないのである。
これはセルフブランディングの観点で言えば失敗と言えるだろう。
自撮りをするのは若い世代に多い。自分を客観視したり他者の感情を汲み取れない未発達の精神がそうさせているのかもしれない。

しかし、それはそれ。私は自撮りをネガティヴに捉えることはしないよう努めている。
ポートレートを撮ろうとする行為は、被写体を肯定する気持ちからくるものであり、自撮りであろうが他人に撮られるのであろうが自己を肯定することは健全なことである。
いっそごちゃごちゃ言い訳せずに自分大好きと言って載せるほうがむしろ反感は少ないのかもしれない。
逆に、本当に何かを訴えたいときに自撮りや主体者の想いなどを無自覚に混ぜ込むのは注意する必要がある。
俺たちクリエイターだぜ?イケてるだろ?などというマウンティングな態度で訴えられても嫌われるだけである。