つまらないデザイン
プロダクトデザイナーであれば、とある製品に施された造形意図を読み解くことはそれほど難しくはない。
初代iPadの背面の丸みは少しでも薄く見せるため内蔵物を中心にレイアウトする工夫であるし、軽自動車によく見られるホイールアーチ周りの谷折りは軽自動車枠最大の車幅を確保しながら立体感や力強さを出来る限り強調する工夫である。
これらはいわばプロダクトデザインの常套手段であり、先人たちが書き連ねてきた教科書の様なもので、たいへん尊いものである。
だが、重要なのはこれらはテクニックでありそれ以上でも以下でもないということだ。
テクニックだけで人の心を動かすことはできない。その根本に確たる思想や価値観があってこそはじめてそのテクニックが活きてくるのだ。
世の中には本当にうんざりするほどモノが溢れていて、しかも今やそのどれもが綺麗にデザインされている。
しかしどれも同じようにつまらなくはないか?
私たちの心をときめかせるようなモノはほんの一握りではないか?
その理由のひとつがまさに根本であるはずの思想や価値観の欠落にあるのではないかと私は考えている。
デザインのすべきことは対象に上から下までブランド服を着せて憧れの読モに1ミリでも近づけようと必死になることではない。
対象のいいところを見いだし、良さが引き立つ服を吟味することだ。
デザインの答えは常に内側にあるのだ。