アイディアをビジョンと呼んでみた話
とくに言いたいこともなかったので長らく放置していましたが、ひさしぶりに書きます。
アイディアって何?と、ふと思うことがあります。
とにかく定義があいまいな「アイディア」という言葉。
デザインの現場ではデザインアイディア=アイディアと呼ばれるわけですが、
実際には機構のアイディアというのもあるしコンセプトアイディアとか、見積のアイディアだってあります。
ひとつひとつ明確に区別していかないと、紛らわしくて業務上のコミュニケーションにも支障が出ることがしばしばあります。
また、デザインアイディア=アイディアと書きましたが、正確にはグッドなデザインアイディアのことのみを指してアイディアと呼ぶのが通常です。
本来の意味でのアイディアはどんなものでもアイディアで、全く話にならないひどいものでもアイディアはアイディアなのですから、
デザイナーがクライアントに提示するものを「アイディア」とひとくくりに呼んでしまうのはあまりにも乱暴だと思います。
これらは単に言葉の使い方の問題に過ぎないとは、私は考えません。
その言葉の持つ意味によってデザイナーとクライアントの認識に齟齬が生じたり、場合によってはデザイナー自身の認識もまたおおいに歪んでしまうのです。
ちなみに、アイディア出しのテクニックをいくら学んだところで何の役にも立たなかったという経験は多くの人がしていると思います。
それは、アイディアを出すテクニックはあっても良いアイディアを出す(見いだす)テクニックはないからです。
これもまた言葉のあいまいさから多くの人が誤解していることです。
このように、日々アイディアという言葉に違和感を感じながら過ごしていたのですが、
あるとき「ビジョン」と呼んでみたらどうだろうかと思いつきました。
アイディアではなく、ビジョン。
「ビジョンA、ビジョンB、ビジョンC・・・」
「おすすめのビジョンはこちらです」
「まぁ一応出してみましたが、このビジョンはあんまりですね・・・」
というセリフとともに冗談半分で周囲に提案してみたりもしました。
このセリフはもちろん皮肉で、
「良いアイディア」というのはつまり「ビジョンを示すもの」であるということです。
最初から最後まで、全体のビジョンを思い描くことができるデザイナーこそ私の考えるデザイナーです。
そしてビジョンというのは、そういくつもあるものではないということが重要な視点だと思います。
業種や組織構成、デザインの対象にもよりますが、たくさんアイディアを出してどれがいいですか?ということをデザイナーにさせるのは時間とお金とやる気を浪費させるばかりであまり関心しません。
しかし私の観測範囲では企業に所属するデザイナーの業務は上に書いたような状態が多そうです。
大企業で人材も充実していればデザイナーの役割分担が狭く深くなっていくのも理解できます。
しかし、あくまでデザイナーはビジョンを見据えて仕事をしなければなりません。